人形

目が覚めて、彼と一緒に下におりようとすると書庫で物音がした。彼は気付いていないようだったので、一人で見に行ってみる。ユカボンが何やらやっている後ろ姿が見えた。自分の部屋だと思ってるのかなぁと思い、そのままにしておいた。

居間に入ると、キッチンにお母さんがいた。彼は挨拶をしている。私は、インターホンも鳴らさずに入ってくるなんて、いくら元自分たちの家だからっておかしいなと思った。「勝手に入っちゃダメじゃん」と軽い調子で言ってみたのだけれど、お母さんはまったく気にしていない様子だ。今晩は皆で外食をするつもりらしく、「たぶんニューオークラになると思うわ」と嬉しそうに言っていた。私は『中華かぁ』と思っていた。

気がつくと、お風呂場にいる。浴槽の所には女の子の人形があった。お母さんは洗ってあげている。私はちょっとコワイような気がしていたのだけれど、浴槽の縁のところに丸くて大きなクッションを置き、そこに女の子を横たわらせてあげた。すると、女の子がニッコリと微笑んだのだった。とても可愛らしい顔をしている。お母さんと2人で「あー笑った〜」と言い合った。

女の子がお風呂から出たので、タオルを巻いてあげることにした。この時にはもう普通に動いていて、人形だという感じはない。タオルはちょっと長すぎて、なかなか上手く巻けない。後ろに来ていたおばあちゃんが別のを手渡してくれた。それは、プールの着替えで使ったようなスカート型をしている。履かせてあげたら洋服のようで良い感じだった。