逃亡者

大部屋にいる。タナカくんと一緒に雑誌か何かを見ていたら、手が当たった拍子に手をつないだ状態のようになってしまった。困惑しつつそのままにしていたら、タナカくんは「俺たちこれからやりにくいぜ」と言っていた。

理由は不明なのだけれど、この部屋から逃げなくてはいけなくなった。私は地下にある食品センターへと走って行った。何かをカーンと鳴らしながらダッシュ。この音は味方同士の合図なので、近くにいる人が味方なら助けてくれるはずなのだ。

その場は無事にやり過ごしたのだけれど、最愛の人が捕われたと知る。私は、絶望的な気持ちを感情的に表しつつ奥の部屋へ。そこは全面ガラス張りで、すぐ正面には駅のホームが見える。隠れる決意をし、コートに身を潜めた。

仲間たちは夜中、外に出て戦闘の練習をしている。皆、細くて長い棒の先に小さな丸いものがついている道具を持っている。それを上に突いて戦うらしいのだ。しかし、練習を始めた瞬間に敵の警報が鳴った。もうバレてしまう、絶体絶命だ!

そう思ったのだけれど、皆はいつの間にか制服に着替えていて体操だかダンスだかの練習をしているフリを始めた。敵たちは、不思議そうに見ている。私はホッとしていた。

ところが一人が気付かれてしまった。スッピンだったから顔が違ったのだ。その子と、「それでバレるのってイヤだねー」と話す。思えば自分もスッピン、さっきはよく手をつないでたなあと思いつつ逃げ出した。

大きな倉庫を通過する時に、何か食べ物が必要だなと思いついた。何しろ、これからは長丁場になるに違いないのだ。皆はお米を一袋ずつ持って走り去っていく。私も取ろうとしたら、白米はもうなかった。代わりに十穀米か何かの袋を持ち、ついでに口の開いている黒糖の粉も抱えた。他にもキナコやマグカップのスープや冷凍食品なんかが置いてあったけれど、バッグも何も持っていないし時間もない。最低限の物しか持って行くことは許されないのだ。事前に準備しておけばよかったなと思っていた。

誰かと一緒に向かいの酒屋さんへ行こうとしている。左右に見張りがいないのを確認して道路を渡った。近付いてみると、とっても高級そうなお店。しかしもう1つのドアから覗いてみたら、多少普通の物も置いてあるのが見えた。でも結局中には入らなかった。

外に出て見上げると、そこは歴史ある銀行の建物だとわかる。私は、「怪盗から銀行をこっそり守る役目」という人のフリをすることにした。壁を登り始めると、さっそく怪しい人物が入り口にやってきた。もしもしと声を掛けたら、銀行の人が「ここはいい」と言う。その後に続いて、3人の人が来た。女の人がタナカくんに文句を言っている。タナカくんは「ル・クルーゼというのは○○だから、4つに割れるというのは〜〜で」などと説明をする。しかし最後は半分おちゃらけた様子で演技をしているので、私はそれを見ながら吹き出しそうだった。もう一人の男性は技術者のような演技をしていた。声でテラオカくんとわかる。3人とも私の仲間で、全員の演技でこの窮地を脱しようという作戦なのだった。

怪盗たちは無事にお金を奪った。緑の髪の女の子が、銀行から報酬としてお金をもらっている(ん?ということは銀行側の勝ち?)。彼女は私たちの仲間だったのだけれど、銀行側に寝返ったのだ。味方たちは「銀行にはいずれ裏切られるよね」と話している。案の定、彼女はいきなり首もとに何かを刺されてしまった。その時の感覚は私が感じていた。チクッと痛いなあと思うと同時に意識が遠のいていった。

さっき隠れていた部屋で、数人が並んで寝ている。向かいのホームには敵がいて、こちらを見て「2人いる」とかヒソヒソ言っている。誰かが「(敵に)手を振ってみて」と指示を出した。敢えて手を振ることで、逃亡者ではないと判断してくれた。顔を隠していたけれど、それも日焼けしているから恥ずかしいんだろうと好意的に解釈してくれたようだった。

夜、広い道路をたくさんの人たちで走る。ブッタイが右端で何か言っているのだけれど、明らかに私への言葉のようだ。ムカムカしてきて「何言ってんの!」と怒鳴った。また何か言う。しかし聞き取れない。「聞こえない!」と言うと、また何か言っている。私に対する文句のようだった。

かまわず走り、車の荷台に飛び乗った。後ろからブッタイが走ってくる。怖いし気分が悪い。私の黒いコートをつかんだので少し破れてしまった。でも彼が「そんなの脱いじゃえよ」と言ってくれたので嬉しい気持ちになっていた。

タナカくんは、黒い円形の何かが回っているのを指差している。ル・クルーゼのように見える。私が「可愛いねール・クルーゼみたいだねー」と言うと「目玉焼きもあるよ」と言われた。しかしそんな風には見えなかった。気付くとそれは彼になっていて、フンフンと何か歌っている。私はすごく楽しい気持ちになっていた。

そしてまた、最初に隠れた部屋で並んで寝ている。一度バレなかったために、皆は油断して、思い切り顔を出して寝ている。私は心配で仕方ない。

すると、案の定バレそうになってしまった。急いで「顔を隠して!」と叫ぶ。頭、足、頭、足、となるように並んでいたのだけれど、手前側は敵から顔が見えるから隠さないといけないのだ。みんな急なことでオロオロしていたので、私は指示を出していた。

今度は昼間。外を歩いている。銀座の歩行者天国みたいな感じだ。カフェテーブルに4、5人で座っていると、声を掛けられた。フランス語なので言っていることがわからない。しかし何も答えないとバレるんじゃないかと思い、私たちはハラハラしている。

男性は私たちの胸元の字を読み上げ始めた。全員分を読むつもりっぽい。その人は友好的な雰囲気だけれど、周りの人にこの字の内容を聞かれたらマズイのだ(これで人種か何かを判断されることを私たちは知っている)。C-80だかCE-80だかそんな文字。

男性の胸元を見ると、四角い時計の文字盤が斜めについていた。それは、手術をしたか何かの合図なのだ。味方にも同じのをしてる人が居て、「同じだ。同じだよ」と喜んで話しかけた。これで安心だというような気持ちになり、私もホッとしていた。