平安へ

「なっち」だか「あやや」だかが、私のバッグの中を覗き込んでいる。いろいろな種類のペンが何色も入っていて、彼女はそれを見て「「こういうのは好きだわ」と言って立ち去った。

彼女は昔の時代(平安とか)から来ていて、それなりの位に就いている人らしい。そして私たちは、これからその時代に行くことになっているのだ。彼女の発言から、その時代に色とりどりのペンは存在しないということがわかった。気をつけないと着いた途端に奪われて、なっち(あやや)に渡せなくなってしまうだろう。私は何十本ものペンを、バッグの内ポケットやポーチに入れて見えないようにしていた。

そろそろ出かける時間だ。デルちゃんと誰かが迎えに来てくれた。

さて行こうかというところで、棚からバンドエイドを見つける。こういうのも必要になるかもしれない。少しもらって行こうと思い、私はバンドエイドを抜き取ろうとした。すると、それは縁が水色のクリアなポーチに入っていることがわかる。これは私の物じゃないか。安心してポーチごとバッグに入れた。

次に、生理になったら困るぞと思った。向こうにはナプキンなんてないに違いない。一度行ったらいつ戻って来られるかわからないのだから、当然持って行くべきだろう。私は大量にナプキンを詰めていた。

その時、棚から靴下が転がってきた。あ、そういえば靴下も今履いてる分しかないぞ。やはり持って行こうと考え、何足か選び始めた。

ハイソックスは、両足分を結べば綱のように使える可能性がある。何が起こるかわからない、用心に越したことはない。そう思い、白いのを一足入れた。ソックスの方はデザインがいろいろあったけれど、どれもパッとしない。色がガチャガチャしているのだ。しかし、原っぱなどにいる時は、そのくらいの方が敵から目立たなくていいかもしれないなと思い直した。迷彩色や、花柄などを選んでいた。

もう随分デルちゃんたちを待たせてしまっている。時計を見ると、25分も過ぎていた。集合時間に間に合うだろうか?急に焦ってきた。しかし、ハンドタオルも持っておきたい。デルちゃんたちに申し訳ないと思いつつも、引き出しを開けて必死に探していた。