おじいちゃん

家に向かって自転車をこいでいる。踏み切りの手前くらいで、カサイくん(最初の会社の同期)に給料明細を届けなくてはいけなかったことを思い出した。慌てて戻り始めたものの、カサイくんはたしか寮だったよなぁと思う。かなり家に近い場所まで来ていたので少し面倒に感じていた。しかも、寮の場所があまり鮮明に思い出せない。

でもまあとにかく、寮に向かった。途中で細い道に入り込んでしまう。少し前を女の子が歩いていたので、『私は道を知っているのよ〜』という感じで通過した。道は直角に2回くらい曲がった後、2方向に分岐していた。どちらに行くか迷ったけれど、どちらともすぐに行き止まりになっていることがわかった。道というよりも、家の前のちょっとしたスペースという雰囲気だ。こうなったら仕方ない。ちょっと照れくさかったけれど、「間違えちゃった」と言いながら振り向いた。女の子はオツボだった。実はオツボも道に迷っていたらしく、私についてきたということのようだった。

2人で歩き出しながら、私は「国府台にこういう道ない?」と話しかけた。「あるある」という返事を聞きながらふと左を見ると、お墓のようだった。こういう道を夜に歩くのは怖いなあと思っていた。

場面が変わり、おばあちゃんの家にいる。おじいちゃんが、本来ならおばあちゃんの席である場所にいる。私は特にそのことをヘンだとは思っていない。おじいちゃんは何だか小さくちょこんと座っていた。座椅子の背中を少し倒してあるので、寝ているような体勢でもある。

お母さんが何かの真似をすると、チャムおじちゃんが「似てないよ」と言った。するとおじいちゃんは、誰かの歌だか喋りだかの真似をし始めた。しかし、割とまくしたてるタイプの人の真似だったため、途中で息苦しくなってしまったようだ。少し上を向いて呼吸を整えている。私はおじいちゃんの近くに寄ると、右のほっぺをおじいちゃんの胸の辺りにつけてみた。おじいちゃんは自分がもう今日で死んでしまうことがわかっているようで、「12月10日で終わり…」というようなことを言った。私はそんなことないよと答えつつも、少し悲しい気持ちになっていた。

カサイくんに明細を届けなくてはいけないので、私は出発することにした。おじいちゃんはとても名残惜しそうだ。「また来週ね」と言ったけれど、私も後ろ髪を引かれる思い。もっと出発を遅らせる手段はないだろうかと考えた。そうだ、お父さんとお母さんが出る時に車で連れて行ってもらえばいいんだ!そう思いついて、お父さんに「送ってって」とお願いした。

ユカボンが「あ、かわいい。寝ちゃったよ」と言う。見ると、おじいちゃんは疲れたのか座椅子で眠ってしまっていた。私は、疲れたのかなぁと思いながら見ていた。

気が付くと、既に車に乗っている。車がゆるゆると動き出した時、お母さんが戻って欲しいと静かな口調で言った。何かそんな気がするらしい。きっとおじいちゃんが今死んじゃうところなんだ、と私は思った。お父さんもそう思ったらしく、素直にUターンする。お母さんが静かに申し出たことを、お父さんは良かったと言っていた。もし「あ!」なんて大きな声を出されたら、きっと驚いて急停車してしまったりしていたことだろう。

私は「ゆっくりね、ゆっくりね」と言っていた。焦って事故でも起きたら大変だと思ったのだ。進もうとすると、前の黒っぽい車がゆっくりと後ろに下がってきた。私たちの車も慌てて下がったけれど、後ろには壁があるのでもう限界だ。壁にコツンと当たった頃、前の車もやっと止まってくれた。私は怒ってクラクションを威勢良く鳴らしていた。

場面が変わった。誰かの結婚式が終わったところらしい。私は写真を撮ろうと思っている。デジカメの電池が残っていたかどうか少し不安だった。電源の位置に悩んだり、モードダイヤルが勝手にくるくる回って困ったりしていた。カオリちゃん、マユミちゃん、ユウイチロウくんの写真を撮ってあげようとしていた。近くにはブーケのようなものが飾ってあった。花は銀色で、周りがラメっぽくキラキラしていた。

ダウンタウンDXで、松田美由紀が話していた内容に影響を受けたかも。”出かけようとしたら母の仏壇に飾っておいた花瓶が勝手に倒れて割れて、何かあると思って家中を確認したらアイロンで床が真っ黒に焦げていたのを見つけた”という話。『すごいな、ちゃんと見守ってくれてるんだな、おじいちゃんも見ててくれてるのかな?』と思いながら寝たから?