飛行機

家族で駅の構内にいる。乗り換えの時間までまだ少しあるらしい。私はトイレへと向かった。

男性用のドアは半透明なのに女性用はまったく向こうが見えないのでわかりにくかった。入っていくと、デルちゃんの声がする。間違いない、と思った。「シマ」と声を掛けるとシマはキョロキョロし始めた。隣りにはバルがいる。何度か呼んだところで私に気が付いたようだった。少し3人で話した。

トイレに入ってから、出発時間までもう余りないのじゃないかと思った。10分に発車。私の時計は既に10分を指している。マズイぞ。この時計は2分ほど進んでいるけれど、それにしたって時間が足りない。慌てて用を足し皆のところへ向かったものの、やはり間に合わなかったようだ。謝ったらお父さんは「次のに乗ればいいよ」と言ってくれた。

乗ったのは飛行機だった。私は窓際の席に座っている。窓が開いていることに気付いた途端、私の体は窓の外に出ていた。右手だけで飛行機の窓に捕まっている。青空が広がっていてとても気持ちが良かったのだけれど、飛行機はなぜか急にスピードを上げた。

体が振り回される。このままでは落ちてしまう!右手を窓の縁に巻きつけるようにして頑張った。通りかかったスチュワーデスさんが「お戻りください」というので足の方から席に戻った。ちょっと怖かったなあ、と思っていた。

近くでは、スチュワーデス二人がさっきの急なスピード上昇について話し合っている。ウィルスか何かが発見されて、それに感染しないためにスピードを上げてあっという間に通過したのだという。その時点で、私の横の窓はまだ全開に開いていた。やばいなあと思いながら急いで窓を閉めたものの、もうこの飛行機中にちらばっちゃったかもしれないなと思っていた。

それにしても空がキレイ。右の方は一面青空。左の方(私がいる方)は、少し深い青色で、ところどころに雲が浮かんでいる。写真を撮ろう、と思った。しかしLOMOをスーツケースの方に入れてしまったことを思い出してしまい、身もだえしそうに悔しい気持ちになっていた。帰国の時は夜だし撮れないだろうなぁ…などと考えていた。

再び乗り換えの時間。飛行機からはいつの間にか降りていた。空港の中のようなところを歩いている。今回はかなり時間に余裕があるようだ。彼とカフェテラスに向かった。そこで(パソコンの)掲示板のようなものを読んだ。キムタクと仕事上で関係あるらしい人が書き込みをしていた。少し自慢げな上に、キムタクの写真を貼っていた。これはきっと事務所に剥がされちゃうんだろうなと思っていた。

外を見ると、広場に女の子たちがたくさん居る。誰かのライブの前なのか、衣装を着てダンスの練習をしている4人組もいた。ファンは熱心なんだなあと、ちょっと感心しながら眺めていた。

場面が変わり、私は上りのエスカレーターに乗ったところだ。振り向くと、オダイちゃんやマルちゃんがあたふたしている。私がひとつしか荷物を持たなかったために、あとの二人は持ちきれなくて困っているようだった。しまった!と思い何段か下に下りたけれど、上るスピードの方が速い。諦めて一度上まで行き、近くのお店に荷物を預けると慌ててまた下に戻った。

二人は頑張ったらしく、荷物はもう置いていなかった。私は預かってもらっていた荷物を取りにさっきのお店に向かった。お店に着くと、すぐ取りに来るとは思わなかったらしく奥の方に片付けられてしまっていた。私は店内をウロウロと探し回っていた。

気が付くと、チャムやヒロミちゃんがそこにいた。ウサギか何かの小動物を買ったらしい。既にケージに入っている。チャムが持って行く。一緒に付いていったら、車のところまで行って後ろの座席に入れていた。

私はヒロミちゃんと手をつなぎ、皆の集合場所に行ってみた。なぜかそこで誰かのお通夜が行われているようだった。お母さんとお父さんがなぜかケンカになってしまったり、おじいちゃんやひいおじいちゃんが遠くの方に座っていたりした。でも本当は、おじいちゃんとひいおじいちゃんに見えたのは良く出来た人形らしかった。そういった人形の展示場も兼ねているようだった。ひいおじいちゃんの人形には、オオタさんのアイディアでお殿様のような衣装を着せられていた。とても立派な感じで座っていたのでおばあちゃんも喜んでいるみたいだった。でも、その近くには大きな幕があり、値段もしっかり書いてあって何となく興ざめした気分だった。

桃井かおりがお通夜の最後にある御礼の言葉を話し出した。泣いている。スピッツの曲タイトルをいろいろ出しながら、それになぞらえて語っているのだ。私も泣きそうだったし、隣りにいた人も泣いていた。しかし、「スピカも…」と言おうとした時にかんでしまった。「スポカ」とか「スシカ」とか、3回くらいは言い直している。桃井かおりが泣きながら笑っていたので私も周りの人も泣き笑いみたいな状態になっていた。

ところで、私たちの向かう先はオーストラリアなのだ。そういえば、お父さんお母さんおばあちゃん妹も一緒なのに、オプションは彼と私の分しか申し込んでいないということに思い当たった。でも今日の旅行は練習なのだとわかっていたので、本番までに何か探して申し込んでおこうと考えていた。LOMOを手荷物に入れるのも忘れないようにしようと思った。練習をしたことできちんと得るものがあったなぁと満足げに思っていた。