汚水補助

おばあちゃんの家に居る。2階の和室で彼と寝ていると、外から大きな声が聞こえてきた。スピーカーで何か放送しているらしい。廃品回収かな?と思ったけれど、男の人の声で「トイレの汚水補助…」と言っていた。夜中なのにウルサイ。彼も起きあがって不審そうな顔をしている。

そのうちに、隣りの家辺りで停まったらしい。呼ばれたから来たようだった。スピーカーで「来ましたよー」という旨を大声で言っている。本当にウルサイ!

そう思っていると、隣りの部屋から両親が入ってきた。さすがにガマン出来なくなったようだ。窓を開けて怒っている。お母さんは別人のような迫力で「っるせーな!コラァ〜!」と叫んでいた。「ラ」は完全な巻き舌だった。ちょっと驚きながら見ていると、お父さんが「あ、怒っちゃったみたい」と言った。どうやらガラの悪い人だったようで、憤ってこっちの家に向かってくる様子。

慌てて階段の方へ行き、上から玄関を見てみた。おばあちゃんは隣りの部屋で起き上がって心配そうにしている。男は既に玄関前に到着したようで、ドアをガチャガチャやっている。それを聞きつけたのか、1階の奥の部屋から妹がやってきたのが見えた。「開けちゃダメ!」と口々に言ったのだけれど、チェーンがかかっているから大丈夫だと思ったらしくカギを開けてしまった。

この家のチェーンは普通のものよりも随分と長く、ドアの真ん中辺りから伸びている。2本かかっていて、クロスの形を作っている。ドアを開けると、その長さが災いしてかなりの空間が出来てしまった。怒った男は少し腰をかがめただけですんなりと侵入してきた。ところが、意外にも男は泣いていた。何かを切々と訴えながら涙を流している。自分の身の上を語っているようだった。

私は『今だ!』と思い、階段を駆け下りて玄関に向かった。「わかるわよ!」と話し始めた。「うちだっておじいちゃんが亡くなったりイロイロ…」まで言ったところで言葉が浮かばなくなった。いつの間にか私の横に来ていたチャムおじちゃんが「イロイロあったんだよ」と言ったので、私も「イロイロあったのよ!」と言い直した。男は反省したらしく、号泣しながら謝っていた。

その男が帰って少し落ち着いたので、皆で写真を見はじめた。従妹と一緒に写っているものが多い。ユカボンが「あれが足りないよー。シンガポールのやつ。」と言うので見てみると、たしかにシンガポールの写真が少ないようだった。「聞けばよかった」と残念そうにしていた。