ラブレター疑惑

教室にいる。けんちゃんが女の子たちそれぞれに、感謝の気持ちを綴った手紙を書いたらしい。けんちゃんらしいなと思っていたのだけれど、不意にその気持ちは疑いに変わった。わざわざそんなことをするなんて、その中に好きな子がいるのでは!?

もし手紙の中に特に熱心に書いてあるものがあるとすれば、その子がそうなのではないだろうか。けんちゃんは離れた場所で他の人としゃべっているし、今のうちに勝手に見ちゃおうかとしばし悩む。

やっぱり勝手には見ることはできない。けんちゃんに話してみることにした。「いちばん長く書いてる人のこと好きなのじゃないの?」と聞くと、けんちゃんはすごく小さな声でモニョモニョそんなことはないよとか言っている。しかし明らかに様子がおかしい。違うなら笑い飛ばすはずだ。私は間違いないと確信し、「じゃあ読んじゃうよ?」と言う。けんちゃんは逃げるようにいなくなった。

私は手紙の封筒の束をピンクのパスコでもらったバッグに入れ、隣の教室へ。改めて手紙の束を見ると、どれも便箋の束が横から見える状態になっている。その中に、見るからに厚みのあるものがひとつあった。これだ。

取り出すと、夏芽亜胡(なつめあこ)と宛名が書かれている。封筒は、ホチキスの針で封がされていた。私はビリッとはがして中身を出した。手紙は「るるりー るりるー」みたいな出だし。その後は

 >tomo
 君がくれた歌をきいてたらtomoの〜〜

などと書いてある。tomoって2回も書いてあるから間違えてるよ!と思ったのだが、どうやらそうではなくて何かを引用していたようだった。相手の子はちょっと幼い?子なのらしく、文章もそんな感じで書かれている。私は『なんでこんな子に!?』と思う。手紙には特に好きとかいうことばは書いてなかったのだけれど、好意は持っているんだろうなーという感じがした。

他の人への手紙も読もうかと思ったけれど、何かもういいやと思う。これじゃモトオクとやってること同じだ…と思ってへこんだ。封筒を元に戻そうとする。A4くらいの封筒を探すと、青学のものがあった。これでもいいかな?と思い、手紙をそこに入れていた。