卵の絨毯と宇宙と海

ヒロシとマミを、彼が車で送っているらしい。彼から電話がかかってきた。すぐにヒロシに代わり、道を聞かれる。何とか(平仮名4文字)という名前の居酒屋と病院が見えると言うので、ならまっすぐ行って突き当たりを左折だと思い、そう伝えた。

私はタキグチミキちゃんと誰か女の子と一緒にいる。やはり車に乗っている。病院というのは、もしかして近所のM医院のことだろうか。だとしたら道が違ってしまう。彼たちのことが心配になり、「悪いけど途中で降ろしてもらえる?」と頼み、サンライズビルの所で下車した。時計を見ると何時だかの10分前だったので、○時ちょうどに待ち合わせすることに。いなかったらまたどこかで遊んでてと言っておいた。

ビルの階段を、上へ上へ。いつの間にかかなり上に来ていたようで、気がついた時にはもう屋上近かった。一番上に到着。階段には少しふんわりした薄焼き卵が絨毯のように敷いてある。これが私の探していた物だな、と思った。しかし、かなりかさばりそう。持って帰れるかなとも思った。

最後の階段。ハシゴのように左右がなく、下まで吹き抜けだ。私は一番上の段にいる。少し下には女の子たちが5人ほどいて、これから下に降りる予定らしい。

ナーちゃんが、誰かを受け止めようとしている。いくら体格が良いとはいえ大丈夫かな?そう思った時、ナーちゃんはバランスを崩してしまった。「あ、あ、あ!」と言いながら何とか体勢を立て直そうとするも、上手くいかずにナーちゃんは階段の横のスキマから落ちて行ってしまう。何十階建ての建物かは知らないが、下が見えないくらいだから相当だろう。落ちていくナーちゃんを見ながら、きっと助からないんだと思う。真ん中辺りにガラスの床が見えた。ナーちゃんはちょうどそこに激突していくところだ。

とにかく、私たちも落ちる危険がある。慎重にしなければ。床部分にいるミンゴちゃんが、階段の脇から階段へと移ろうとしている。しかし距離的に危険だ。ミンゴちゃんはやってみると言うけれど、落ちたら一巻の終わりなのだ。

とにかく、私が上に行くことにした。そうすれば、私の下の子が少し上に来られて、ミンゴちゃんも楽に階段に移れるだろう。私と私の下にいた子は上に移った。ミンゴちゃんは階段に移れたようだ。

レスキューの人たちがやってきた。ホッとする。私はサンライズビルのところで待ち合わせをしていたことを伝えた。「あの誘拐があった場所です」と言ったらわかってくれたようだった。

いつの間にか、階段の下の方は火が広がっている。私たちも降り始めるが、とても怖い。階段は二段ベッドのはしごのように引っ掛ける形式で、何とも心もとない。「怖いよーこわいよー」と言いながら足を掛けて2段ほど降りた。しかし、下の子がグラリと揺れる。ハシゴが外れそうになっているのだ!一体どうすればいいんだろう。

その姿勢のまま怯えていると、レスキュー隊だった人は別の人たちになっていて、手を離せばいいなどと言う。まさか、そんなことはできないよと思いながら周りを見ると、外は宇宙だった。真っ黒な空に無数の星。とてもキレイ。しかし手を離せば、宇宙の塵になるってことだ。彼と一緒じゃないし、まだ死ぬなんて嫌だ。

そうは思ってみたものの、美しさにやられたのか、塵になるのもいいかもねなんて考えも浮かんでくる。でも未練はある。昔の日記を読み返すくらいなら許されるだろうなと考えていた。

目の前には、ウエマツの日記が上映されていた。大学時代に書いたものらしく、日記というか数学のノートだ。数式ばかり書いてある。私だったら高校の時からのものが上映されるんだろうか?ちょっと恥ずかしいなあと思った。

私の順番が来るまで違う場所にいようと思う。横に部屋があるのを見つけて入ってみると、和室だった。ハシゴとは違い、安定感がある。下にいた女の子だかを誘って一緒に入ったのだけれど、彼女は浅野ゆう子だった。宇宙だというのに、こんなに安定感のある部屋って作れるのかな?不思議に思い、もしかしてここが宇宙で手を離すと塵になるなんてのは嘘かもしれないと思い始める。そんな話をしながら、私は両手で浅野ゆう子の両目を思い切り開かせていた。

不思議に感じたことを聞いてもらおうと思い、私は誰だかの名前(先生?)を大きな声で呼んだ。すると女の人が入ってくる。問い質すと、「気付いてなかったの?もう海の上よ」と言いながら和室の障子を開いた。外は一面、海だった。あまりキレイな海ではない。洪水の後なのかもと感じる。部屋がそのまま船のようになっていて、私たちは海の上を進んでいるのだった。

ホッとすると同時に、半分くらい海に沈んでいて大丈夫なのかとも思う。すると、女の人が「自動コーヒー運び機だから」と言う。そうかそれなら安心。

私は、この船がコーヒーを運ぶ物だと理解したのになぜか「じゃあコーヒーを持って来てもらうこともできるんだ?」などと聞いていた。時間はかかる(6時間?6日?)が可能だという答えだった。

やがて、最初の建物に着いた。必要な荷物を取ってから各自の行きたい場所に送ってくれるんだなと思った。船は、建物の入り口をそのまま突破するつもりらしい。ドアがあるのも気にせず進んでいく。

私はちょうど舳先の辺りにいたので危険を感じる。既に舳先はドアに突入していて、先端の木の部分が少し欠けてしまっていた。このまま進んだら舳先は壊れて私も痛い目に遭うに違いない。慌てて後ろに下がり、舳先の下にあたる空洞に体を隠した。しゃがみながら両手を挙げ、出っ張りにかろうじて手を引っ掛けて衝撃に備える。

船は階段を上っているようだ。すごい角度になっている。スピードもすごい。何かのカケラだかカスだかが飛んでくるのがわかった。私は顔を下向き加減にし、ゴミを吸い込まないようにそっと鼻で息をしていた。

無事に上に到着すると、人が大勢いた。シュンタが歩いていたので、「落ちないでよ〜」と声を掛けた。

気付くと、私はパンツ一枚だった。横にいつの間にか脱いだらしい服がたたんで置いてあったのでそれを着る。ブラジャーをしていたら、猫が2匹寄ってきた。1匹は隣りにいた子にじゃれている。胸を噛まれたら大変と思い、私は急いでブラジャーを着ける。間に合ったけれど、前のボタンの所に猫がやって来て噛み付いた。布にガッチリ噛み付いていて、離しそうにない。私はちょっと焦って、おでこをゴシゴシ撫でてみた。でも駄目。仕方ないから口の辺りをグイッと掴んで無理やり開けるかなと考えた。口の辺りに手をやると、ちょっと湿っていた。