行方不明

ふと気付くと、サーちゃんがいない。ここは出産をした病院、私はまだ入院中なのらしい。もしかして外に出て行ってしまったかもしれない!不安になり、私も慌てて外へ探しに出た。景色は中学の時に通っていた塾を出た時のような感じ。いつの間にか歩けるようになっていたんだなと驚きつつ、辺りを見渡す。しっかり歩けるわけではないだろうから、そう遠くへは行っていないだろうと思う。赤ちゃんの泣き声がする。すぐ横に駅へと続く階段があったので、ここを下りたのかもと思い私も下りた。新宿駅のような印象。お店と通路が入り混じっている。サノさんがいたので、娘がいなくなったと話して別れ、走って探す。気付くと、部屋に戻っていた。もう朝。サーちゃんはいない。どうしよう……。誰も何も言っていないということは、やはり建物の中にはいないのだろう。再び外へ。耳を良くそばだてると、赤ちゃんの声が聞こえてきた。やっぱり階段の方だ。急いでおりる。ゆうべは気付かなかったところに分岐の道があったので、そちらに行ってみると、少し開けた場所に出た。その奥に、サーちゃんが寝ていた。駆け寄ると、サーちゃんはなぜかオムツ1枚。体の下には体よりも一回り大きいサイズのホットカーペットが敷かれている。誰かが寝かせてくれたのだろうか?駆け寄って抱き寄せると、服を着ていないだけあって体がひんやりしている。ごめんねごめんねと謝りながら、あたたかくなるようにぎゅっとしていた。近くに女の人が2人座っていた。この人たちがサーちゃんを見ていてくれたらしい。お礼を言い、少し話した。昨夜の19時頃からサーちゃんはここに来ていたようだ。そんなに前から……。サーちゃんがいないことに気付いたのが、せいぜい21時頃だった気がする。しかも部屋に戻って普通に寝たのじゃなかったか。猛省の気持ちでいっぱいになっていた。しかし、サーちゃんが無事に見つかって本当に良かった。一気にホッとした気持ちになる。サーちゃんを抱いて戻りながら、「お母さん青くなっちゃったよ」などと話しかけていた。