主婦の友隊

主婦の友隊」という正義の戦隊を、タレントの井森美幸がたった独りで結成した。そのニュースは井森の所属事務所から各マスコミにFAXで送られ、早速芸能記者達が取材に殺到した。

井森は、取材陣を自身が出演している料理番組のセットに案内し、厳かにインタビューが始まった。以下にその時の井森の言葉を要約して記す。

他に隊員はいないとのこと。それなのにわざわざ「隊」という形態を採っているため、周りからはしばしばその事を嘲笑されるらしいが、井森はその度に「先代は柏原芳恵さんだったんだからね!!」と、自慢げに豪語して耐え抜いているらしい。

隊には規定のコスチュームがあるらしい。井森曰く、鉄板で出来た前掛けのようなエプロンを装着し、武器としてお玉を携行するとのこと。有事の際にはその出で立ちで敵に立ち向かうらしいが、井森自身もどのような時が「有事」で「敵」とは誰なのかは把握していないらしい。先代(芳恵)に聞いても「おのずと判ってくる、おのずと」と言われただけとのこと。

このお玉が優れもので、敵を殴打したい時はお玉の凸部を使用し、敵をなますにしたい時は、鋭利な刃になっている凹部で切り刻むらしい。(図-1参照)

あと、エプロンにも何かの機能があるらしいが、井森は失念したという。そのことがばれると怖いので、先代にも再確認できないらしい。

この時点で井森は興奮してきたのか「ちょっとやってみましょうか?」と言ってセットの裏側に周り、コスチュームに着替えて出てきた。

井森は、武器であるお玉を記者の前で「えい!やー!」と振り回していたが、勢いあまってお玉が足元に落ちた。慌てた井森が足元のお玉を拾おうとして前屈みにしゃがむと、井森の顔が横半分に切断された。記者がよく見ると、エプロンの上部が鋭利な刃になっていた。どうやら井森が失念したエプロンの機能とはこの事だったらしい(図-2参照)

井森は今際の際に「芳恵様ぁーーー!!」と叫んだ。だが薄れ行く意識の中で、井森は先代が「柏原芳恵」ではなく「榊原郁恵」であることを思い出した。