黒なら本命

バレンタイン。

ミズタニくん(オオタくん?)という男の子が、皆に外に出なよと言われている。中が黒いチョコレートをもらったらそれが本命らしい。彼はもらえないと思い込んでいる。自信がないのだ。

学校は終わったようで、皆それぞれに帰って行く。ミズタニくんは外に出たところで掃除中。しかし、何か思いついたようだ。『カラーチョコ?』と浮かんだらしい。

ジーンズの後ろのポケットに、カラーチョコ(チョコボールのような入れ物にM&Mみたいなのが入ってる)。慌てて出し、一粒をかじる。そう、中身は黒いのだ。中が黒いから外も黒いとは限らない。あの子のシャイな想いが伝わってくるではないか!

ミズタニくんは、もらった子を追って歩道橋を走り出した。金八先生で一番前の席に座っていた子だ。ミズタニくんは追いつき、何か2人で話している。女の子が照れくさそうにしているのが遠目からでもわかった。2人で歩き出す。

見えなくなりそうだ。その後が気になり、私は走り出した。途中、妊婦なんだからこんなに走っちゃ駄目だよねーと思う。

歩道橋の上に到着したけれど、もう2人の姿は見当たらない。代わりに、赤いジャージのようなのを着たサエちゃんが立っていた。私の後ろにいた数人は、ヤバイ!と言って去って行ってしまう。どうやらサエちゃんは、私たちがからかい半分で見に来て邪魔をすると思い、怒っているようだった。

サエちゃんに近付いて話す。「サッカー部のことでしょ?」と言われる。私が邪魔をしようとしているのではないとわかったのか、態度が軟化したのでホッとした。

元の場所に戻ると、クラス?の皆はもう集合しているようだ。先生が前に立っていて、皆は数箇所に分かれて体育座り。私は右の方の小部屋に座った。

鍵の担当の子が、鍵を探しているらしい。見つからない様子。先生は、「鍵を忘れたり失くしたりしたのはいけないが、このままじっとしていても仕方ない。言い出すタイミングが大事なのだ」というような話をした。

セキヤさんが、さっきのミズタニくんも、誘い方は良かったんだけどタイミングがね〜と言って場を和ませようとしていた。私は『どうでもいいけどトイレ行きたい』と思っていた。